ロシア人の名前って名前、苗字まではいいけど、実は、父性といって父親から受け継ぐ名前があるのをご存知ですか?
例えば、「ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・プーチン」とは、プーチン大統領のフルネームですが、彼のお父さんの名前がウラジーミルだってわかるんです!
今回は、以下の4つのテーマに沿って、意外と深い?ロシア人の名前について月見タカがわかりやすく解説していきます!
目次
ロシア人の名前の仕組みって?
ロシア人の名前の表記は公式には、
苗字(ラストネーム)→名前(ファーストネーム)→父称(父親のファーストネームの変化形)
の順で書きます。
日本と同じく苗字→名前の順です。
それに逆らうつもりはありませんが、今回の記事では、
名前→父称→苗字の順でそれぞれの仕組みをご紹介します!(←これには理由があるんです)(笑)
彼もジェーニャで、彼女もジェーニャ?どういうこと?
苗字と違ってロシア人の名前の数は多くない!クラスにエレーナが10人も!?って”どえれーな!”ってことにもなりかねませんね(笑)
スミマセン…(汗)
では、まずはロシア人の名前(ファーストネーム)からご紹介してまいります!
ロシア人には愛称があります
愛称って具体的に何か?というと、日本語でいう「~ちゃん」と呼んだりするのに近い感じですね。
なので、割と近しい仲でないと用いません。
「アントーン(男性)」であれば、「アントーシャ」とか、「アンナ(女性)」であれば、「アーニャ」や「アニュータ」という風に呼んだりするわけです。
でも中には男女でカブる!って愛称もあったりします。
それが、見出しに書いた「ジェーニャ」や「サーシャ」なんかがそうです。
今回は上記の二つの例で見てみましょう。
●「Женя(ジェーニャ)」← 「Евгений エヴゲーニー(男性)」と「Евгения エヴゲーニヤ(女性)」の両方の愛称
●「Саша(サーシャ)」←「Александр アレクサンドル(男性)」と「Александра アレクサンドラ(女性)
なので、「サーシャ!」と呼んでいるのを聞いているだけでは、呼ばれた者が女性か男性かさえわからない!ってことも多いのです(笑)
ロシア人の名前(ファーストネーム)の由来
ロシア人の名前(ファーストネーム)ですが、他の西洋諸国と同様、キリスト教からの由来が多いです。
まだロシア帝国になる以前の、古代ルーシの時代にビザンチン帝国からキリスト教を受容した10世紀頃からある名前として代表的な名前をあげると、 イヴァン、アンドレイ、ピョートル、アレクサンドル、マリーヤ、タチヤーナ、エレーナ、アンナ等がありますが、ギリシャ語由来の名前か、ラテン語由来の名前と主に2系統あります。
ここでは、参考程度に(ややマニアックな内容なので、関心のない方は読み飛ばしてもらって構いませんw)
ギリシャ語由来の名前(大体の意味)
アレクサンドル(本来の意味は守護聖人)、アンドレイ(勇敢)、アルセーニー(勇猛果敢な)、ヴァシーリー(守護)、ゲンナージーとエブゲーニー(気品ある) エカテリーナ(清い、清潔な)、 タチヤーナ(創業者、創始者)などなど。
ラテン語由来の名前
ヴィークトル(勝利者)、ヴァレーリー、ヴァレーリヤ(丈夫で強い)、コンスタンチン(不屈な)、マクシーム(一番偉大な)、ナターリア(親愛な)などなど。
ロシア人の父性
ロシア人だけでなく、多くのスラブ民族の名前の特徴としてあげられるのが、「父性」です。
父性とは何か?というと、ミドルネームにあたる部分にお父さんのファーストネームが変化した形で入るわけです。
ここで例を出します。
苗字が、クズネツォーフという一家にアントーン君(男の子)とナターリヤちゃん(女の子)の兄妹がいたとします。
そして彼らのお父さんの名前がイヴァンさんだとします。
すると、アントーン君のフルネームは
クズネツォーフ・アントーン・イヴァーノヴィッチ
妹のナターリアちゃんは、
クズネツォーヴァ・ナターリア・イヴァーノヴナ
となります。
え、なんで苗字も違うの?? と思われた方も多いでしょうが、次の項でご説明しますので少々お待ちを(笑)
ロシア人の父称の仕組みは以下の通り
・男性の場合は「父親の名前」に「-ович(-ovich)」、もしくは「-евич(-evich)」を語尾に付け足す
・女性の場合は「父親の名前」に「-овна(-ovna)」か、「-евна(-evna)」という語尾を付け足す
上記のような規則があります。
アントーン君は
Кузнецов Антон Иван +ович
アントーン・イヴァン+ノヴィッチ・クズネツォーフ
妹のナターリアちゃんは、
Кузнецов +а Наталия Иван +овна
クズネツォーヴァ・ナターリア・イヴァン+ノヴナ
という仕組みになっているのです。
ここで少し大事なことを教えます。
偉い人に向かってファーストネームだけで呼ぶのは、日本では大変失礼にあたりますよね?
ロシアでも実は名前に関するマナールールがあります。
ロシアでは、苗字を付けて呼ぶよりも「名前+父性」で呼ぶ方が礼儀上では上位になります。
なので、上記のアントーン君やナターリアちゃんは将来大きくなったら社会でこう呼ばれるようになるわけです。
「Антон Иванович! (アントーン・イヴァーノヴィッチ!)」
「Наталия Ивановна!(ナターリア・イヴァーノヴナ!)」
しかし、ロシアでは同じ「名前+父称」の持ち主も少なくないのです。
そういった時には苗字を最初に付けてあげてください。
大抵の場合は、「名前+父称」でビジネスの場合も対応できます。
時には「父称」がわからない!って場合があります。
そういうケースの時は「何とお呼びしたらいいですか?」と聞いてみてください。
意外にフラットに「アントーンでいいよ」とか、「ナターリアでいいわ」って返ってきたりします。
ロシア人の苗字は意外と多い?
ロシアの苗字って意外と多いように個人的な感想としてはあります。
調べてもみたのですが、よくある苗字として250をピックアップされているくらいで、具体的な総数については残念ながらわかりませんでした(←宿題にさせてください)。
ただし、ロシアにはロシア人だけでなく200くらいの民族がいますし、人種も系統も様々なので、かなりの苗字の種類(日本人ほどかはわかりませんが)があるといって間違いないでしょう。
ロシア人の苗字は男女で少しだけ違う?!
さて、先ほどのクズネツォーフ一家の例をもう一度ふりかえりましょう。
アントーン君(男の子)とナターリヤちゃん(女の子)の兄妹。そして彼らのお父さんがイヴァンさんです。
兄のアントーン君のフルネームは
クズネツォーフ・アントーン・イヴァーノヴィッチ
妹のナターリアちゃんは、
クズネツォーヴァ・ナターリア・イヴァーノヴナ
でしたね。
なぜ苗字が兄妹で違うのか?についてまず結論からいいます。
ロシアでは、男性と女性では苗字が男性形(実際には変化なし)、女性形(語尾にаを付け足す)ことが原則だからです。
そう。あくまでも原則です。
変化しない苗字もあれば、外国人の名前であれば変化させません。
ということは、彼がどこの系統(民族的に)なのかが、苗字を見れば、父系がわかるわけなんです!
あの羽生選手も尊敬していることで有名な、フィギュアスケート金メダリストに「エヴゲーニー・プリュシェンコ」という選手がいたのは皆さまのご記憶にも新しいのではないでしょうか?
彼の「プリュシェンコ」という苗字だけを見ると、ウクライナ系を想像させます。
なぜかというと、ウクライナの苗字は彼のように、「-о(オ)」で終わる苗字の人が非常に多いからです。
ロシアの古くからある苗字では、語尾が「-ев(~エフ)」や「 -ов(~オフ)」であるものが多いです。
例の一家、クズネツーフさんもそうです。
ロシア語で表記すると、Кузнецовで、語尾が「 -ов(~オフ)」ですね。
実はこの苗字、日本人でいえば、「鈴木さん」や「佐藤さん」くらいによくある苗字なんです。
調べましたら、ロシアで3番目に数の多い苗字が「クズネツォーフ」だそうです!
それもそのはず! 僕個人もこれまでに数十人は出会いました(笑)
ちなみに1位は「スミルノーフ」、2位は「イヴァーノフ(またはイヴァノーフ)」だそうです。
↓(ロシア語の記事です)
また日本人の苗字と同じくロシア人の苗字にも意味があるものが多いんです!
次の項でご紹介しますね。
ロシア人の苗字の持つ意味
クズネツーフ一家にもう一度ご登場願いましょう(笑)
「Кузнецов」という苗字の由来は「кузнец(クズニェーツ)=鍛冶屋」という単語から派生しています。
ということは…?
彼らの先祖は鍛冶屋さんであった可能性があります!
ただそれだけの話なんですけどね(笑)
では、僕ら日本人もよく知る彼らの先祖は誰だったのでしょう??
↓↓
ロシア人の名前を分析! あの人の名前って実はこういう意味だった!?
ロシア人の苗字には先祖の職業であったり、性格であったり、道具や動物が由来になっていることが多い!というお話をしました。
では、皆さまもよく知るロシア人たちの苗字って何が由来なの?というのを、ロシア語の視点から検証してみたいと思います!
さっそく↓↓
●プーチン:旅や道を意味する「путь」から由来します。
ちなみに彼のフルネームは「ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・プーチン」でしたよね?
ウラジーミルをロシア語にすると、「Владимир」です。
どういう意味が込められているかというと、「世界の征服(Влади мир(ом))の意味が込められている名前なんです!!
特に珍しいという名前ではありませんが、プーチンさんの場合は父称もウラジーミル! というわけでして…フルネームが「征服者の道」といった意味にも取れないではない意味深な名前の持ち主なんですよ! 名前までさすがです(笑)
他にも3名ご紹介!
・メドヴェージェフ(首相、元大統領)、メドヴェジェヴァ(フィギュアスケート選手):「медведь」:(動物の)熊!クマさんです!こちらはあるあるな苗字です!
・レーニン:「レーニン」という名はレナ川から取られたそう。実は本名はウリヤーノフ!(ウリヤノフスクと関係ある?)
・ザギトヴァ(フィギュアスケート金メダリスト):Загитова(ロシア語読みだとザギトーヴァになります)とはもともとはバシキルスタンやタタールスタンあたりの男性の名前「Загитов(ザギトーフ)」が由来だそうです。もしかしたらルーツはあちらの方にあるのかも? 僕もザギトヴァ選手を通してはじめて出会った苗字でした。
参考にしたサイト↓(ロシア語です)
最後に
ロシア人の名前、父性、苗字と見てまいりましたが、いかがでしたでしょうか?
ロシア人の名前も意外と奥が深いことをご理解いただけたなら、僕としましても幸いです。
ご精読いただきありがとうございましたm(_ _)m